世界で1億5千万人を苦しめるリンパ系フィラリア症
2014年3月20日、エーザイ株式会社は、英国のLiverpool School of Tropical Medicine社およびUniversity of Liverpoolと、リンパ系フィラリア症および河川盲目症に有効なフィラリア駆虫薬創出を目指した共同研究を開始することを発表した。
近年では、政府や非政府組織(NGO)だけでなく、民間企業にも、開発途上国の公衆衛生のための関与が求められている。一般社団法人グローバルヘルス技術振興基金は、そのための研究開発などを支援する国際的非営利組織。今回のプロジェクトは、この基金から、2年間の助成金交付対象として採択された。
リンパ系フィラリア症とは、寄生虫であるフィラリアの寄生による疾患で、患者数は推定1億5千万人。蚊によって媒介され、感染により四肢の浮腫が生じたり、リンパ機能の低下による発熱や炎症が引き起こされることもあり、世界の主要な身体障害の原因にあげられる。河川盲目症はフィラリアの寄生を原因とし、失明を来しうる眼病変である。
より短期間で優れた治療効果のある薬剤開発を目指す
リンパ系フィラリア症および河川盲目症の治療には、現在、抗フィラリア薬が用いられている。この薬剤はフィラリア幼虫やミクロフィラリアには有効であるが、フィラリア成虫を駆除するには、年1回の集団投薬を数年にわたって継続しなければならない。
今回の共同研究では、フィラリア成虫の体内にあるバルボキア菌を除菌する治療薬の創出を目指す。バルボキア菌は、寄生虫の成長や増殖、生存に不可欠の菌であり、これを除菌することによりフィラリア成虫を駆除することができる。また、既存の抗フィラリア薬と比べ、治療期間の短縮や、より効果的な治療が期待される。
これまでに1万以上の抗バルボキア菌作用を有する化合物がスクリーニングされており、約6種類の分子骨格が感染症薬の候補となっている。エーザイらの研究グループは、これらのうち2つについて、前臨床試験の実施と候補化合物の特定を目指すとしている。

Liverpool School of Tropical MedicineおよびUniversity of Liverpoolと抗ボルバキア菌作用に基づく新規フィラリア駆虫薬創出に向けた共同研究を開始(エーザイ株式会社)
http://www.eisai.co.jp/news/news201412pdf.pdf