発表の概要
理化学研究所などから構成される共同研究グループは、躁うつ病の治療に用いられる気分安定薬(リチウム)のイノシトールを介した作用メカニズムの一端を解明したこと、そして、イノシトールの合成経路と哺乳類の下顎形成との関係性を発見したことを2014年2月13日に発表しました。
躁うつ病は2大精神病の一つであり、うつ状態と躁状態の極端な気分の波が繰り返し起きるという精神疾患です。一般的には躁うつ病に対して気分の波の振り幅を抑えるために気分安定薬が用いられます。リチウムは古典的な気分安定薬の一つですが、実際にリチウムがどのような形で作用しているのかは明らかになっていませんでした。
イノシトールを合成する酵素がカギ
共同研究グループはイノシトールを合成する酵素である、イノシトールモノフォスファターゼに着目しました。遺伝子レベルでこの酵素の働きを抑制した細胞内イノシトール枯渇マウスを観察したところ、正常マウスにリチウムを投与したマウスと同様の変化が現れました。このことから、リチウムの作用とはイノシトールモノフォスファターゼの働きを抑えることであると推察することができました。
また、細胞内イノシトール枯渇マウスは下顎の形成が非常に不良であることから、細胞内でイノシトールを合成することが顎の発育にも関与していることが合わせて判明しました。このように、細胞内イノシトール枯渇マウスを通じて、新規薬剤の開発だけではなく、顔面形成のメカニズムの解明にも有用であることが判明され、この研究成果はアメリカの科学雑誌に掲載されるとのことです。

理化学研究所 プレスリリース
http://www.riken.jp/