肝線維化検査技術の実用化の背景
シスメックスは、独立行政法人産業技術総合研究所の糖鎖医工学研究センターと共同で、肝線維化の進行度合いを糖鎖マーカーを用いて血液検査によって判定する試薬を開発し、薬事承認を得たことを発表しました。
糖鎖マーカーは、糖たんぱく質に存在する糖鎖という、糖が連なりタンパク質や細胞表面に存在する物質の構造変化をターゲットにしたバイオマーカーであり、今回共同開発した肝線維化検査試薬は、この糖鎖マーカーと、肝線維化の進行と相関性が高いレクチンを利用して、肝臓の線維化の進行度合いを数値化することを可能としました。
従来の検査手法と本技術のメリット
これまでのタンパク質ベースの検査では、糖鎖構造Mac-2 binding protein糖鎖修飾異性体の表面上の質的変化を捉えることができず、この糖鎖マーカーを用いた肝線維化検査技術の実用化に関しては世界初となります。
もう一点、実用化に至った背景には測定時間の短縮化があります。基礎研究の段階では、糖鎖構造変化の測定に約18時間要していましたが、診断システムの開発結果、わずか17分程度で測定することに成功しました。
慢性肝炎から肝細胞がんへ進行する過程では、肝臓の機能が、肝臓の線維化を通じて徐々に損なわれていきます。そのため、ウィルス性慢性肝炎の治療においては、肝臓の線維化の度合いを把握することが重要であり、現在のところ肝臓組織を実際に採取して行う生体組織診断が主流でした。今回実用化に成功した検査方法により、入院を必要とせず採血のみによって肝臓の線維化の進行度を素早く測定でき、患者の負担を軽減することが期待できることとなりました。

シスメックス プレスリリース
http://www.sysmex.co.jp/