発症の最大のリスク、22q11.2欠失
名古屋大学は、8月23日、22q11.2欠失領域に存在するRTN4R遺伝子内において、統合失調症病態に強い関連を示すアミノ酸配列変異が存在することを、同学の研究グループが世界で初めて同定したと発表した。
この成果は、同大大学院医学系研究科精神医学講座・木村大樹助教らの研究グループが、大阪大学大学院医学系研究科/生命機能研究科・山下俊英教授らの研究グループと共同で実施した研究によるもの。22q11.2欠失は、統合失調症発症の最大のリスクと考えられている症候群。
患者約2000名のゲノム解析を実施
統合失調症は、陽性症状・陰性症状・認知機能障害を主症状とし、社会機能の低下や高い自殺率を呈する疾患。病因解明は未だ進んでいないが、家系内に罹患者が集積し遺伝率も高いことから、病態解明にはゲノム解析が有望と考えられている。
RTN4Rは、22q11.2欠失内に存在し、神経軸索伸張や神経細胞のスパイン形態に密接に関わるNogo受容体をコードしており、統合失調症発症への関与が示唆されている。しかし、実際に統合失調症患者内に存在する変異がどうやって発症に関与するのかは不明だった。
そこで同研究グループは今回、統合失調症患者約2000名のゲノム解析を実施。RTN4R-R292H変異が、統合失調症と統計学的に有意な関連を示すことを、明らかにしている。
新規の治療薬開発に役立つことを期待
同研究グループは、計算機によるタンパク質の立体構造モデルにより、RTN4Rと結合して機能する分子であるLINGO1との相互作用部位にRTN4R-R292Hが存在し、RTN4R-R292HによりLINGO1との相互作用が変化することを予測。細胞レベルのin vitro機能解析により、この変異がLINGO1との結合性低下を起こすこと、また神経細胞の成長円錐の形成に影響を与えることを、明らかにした。
同研究グループは今回の成果が、新規の治療薬や診断方法の開発に役立つことを期待している。
(画像はプレスリリースより)

統合失調症に関連する遺伝子変異を22q11.2欠失領域のRTN4R 遺伝子に世界で初めて同定 - 名古屋大学
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/