多様な機能性を持つ抗体「Variabody」の作製に成功
国立研究開発法人理化学研究所は7月21日、人工アミノ酸を用いて抗体医薬の化学修飾に有用な部位を特定し、多様な機能性を持つ抗体「Variabody」の作製に成功した、と発表した。
大腸菌RFゼロ株を用いて高機能抗体をデザイン
理化学研究所の共同研究グループは、2010年人工アミノ酸をタンパク質に導入する際、翻訳終結因子(RF-1)をコードする遺伝子を除去する条件を大腸菌で発見し、遺伝暗号を人為的に変更した大腸菌RFゼロ株を開発した。
さらに、大腸菌RFゼロ株により、人工アミノ酸をデザイン通りにタンパク質の複数部位に導入する化学修飾技術を確立した。
今回、乳がんの抗体医薬のトラスツズマブ(Trastuzumab)に大腸菌RFゼロ株を用いて作製した、トラスツズマブを断片化したFab抗体(Tra-Fab抗体)に、人工アミノ酸のo-Az-Z-Lysを導入し、化学修飾に適した多数の部位を特定した。
そして、特定した部位から、Tra-Fab抗体に抗がん剤を結合させて作製した武装抗体は、修飾していないTra-Fab抗体より高い抗がん作用があることを確認したという。
また、二つのTra-Fab抗体をいろいろな組み合わせで連結して作製した二量体Tra-Fab抗体には、乳がん細胞の増殖を抑制するのではなく、逆に促進するものがあったとのこと。これは、連結部位の選択により、抗体をアンタゴニスト(拮抗作用)からアゴニスト(作動作用)に変換できることを示している。
したがって、連結部位の選択により、2分子の抗体の高機能化手法が検証できた。
共同研究グループは、この連結技術・作製された抗体を「Variabody」と名付け、理化学研究所と協和発酵キリン株式会社で特許を共同出願したとのこと。
今後、Variabodyは新しい形式として抗体医薬の開発に貢献する、と期待しているという。
(画像はプレスリリースより)

国立研究開発法人理化学研究所のプレスリリース
http://www.riken.jp/pr/press/2017/20170721_1/