オンライン科学雑誌Scientific Reportsに掲載
基礎生物学研究所の統合神経生物学研究部門は2017年7月17日のプレスリリースで、アスビオファーマ株式会社との共同研究を通じて、グリオブラストーマが抗がん剤に耐性となる原因とされる「がん幹細胞性」の維持に、チロシンホスファターゼの1つPTPRZという酵素が関わることを発表した。
また、PTPRZに対してアロステリックな阻害作用を有する化合物を見出し、この阻害剤が、がん幹細胞性の指標である細胞スフィアの形成を阻害すること、また動物実験において、この阻害剤と抗がん剤テモゾロミドを併用投与することによって、抗腫瘍効果が有意に増強されることを明らかにした。
PTPRZ阻害剤の開発は有望な創薬戦略
神経膠腫(グリオーマ)は、脳内にもともと存在するグリア細胞、あるいはグリア前駆細胞に由来する固形がんで、脳腫瘍の約2割を占めている。
もっとも悪性度の高いグリオーマは、膠芽腫(グリオブラストーマ)と呼ばれ、確定診断後の平均余命は約14ヶ月と言われており、効果的な治療法の開発が待たれている。
PTPRZ阻害剤の開発が、グリオブラストーマのがん幹細胞に対する新たな創薬戦略として有望であることを示しており、PTPRZはグリオブラストーマだけでなく、多くのがん細胞で発現が上昇していることが知られている。
今回、共同チームが開発した阻害化合物をベースにして、より医薬品開発に適した創薬シード化合物の創出を目指すことを今後の計画としており、また、この化合物を解析ツールとして活用し、グリオーマ以外の疾病におけるPTPRZの役割についても明らかにしていく予定としている。
(画像はプレスリリースより)

基礎生物学研究所プレスリリース
http://www.nibb.ac.jp/press/2017/07/17.html基礎生物学研究所
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