5月15日には米国科学雑誌オンライン版で公開
東京大学医科学研究所は、5月19日、同研究所の研究グループが、炎症細胞による癌転移の促進に関わる重要な分子「Mint3」を発見したと発表した。
この発見を行ったのは、同研究所癌・細胞増殖部門 人癌病因遺伝子分野・坂本毅治助教らの研究グループ。米国東部時間の5月15日には、米国科学雑誌のオンライン速報版にてその成果が公開されている。
癌細胞が遊走しやすくなる転移性ニッチを形成
癌細胞が遠隔臓器に転移する場合、原発巣の癌細胞が血管内に入り、転移先臓器で血管外へ遊走する必要がある。癌細胞の血管外遊走に、癌細胞のみならず炎症細胞などの助けが必要なことは、以前から明らかになっていた。しかし、その詳細なメカニズムは不明のままだった。
今回同研究グループが発見した「Mint3」という分子は、炎症細胞の一種である炎症性モノサイトの機能を制御する。そしてこの制御により、癌細胞が転移先臓器で血管外遊走しやすくなる転移性ニッチを形成するという。
癌転移阻害薬の開発につながるもの
癌は、局所で増殖している場合、外科手術や放射線治療などが有効となる。しかし、全身に転移した場合、有効な治療法があまり存在しない。そのため、癌の転移を抑える薬剤の開発が待望されてきた。
同研究グループは今回の研究成果が、炎症細胞「Mint3」を標的とした癌転移阻害薬の開発につながるものとして、期待しているという。
(画像は東大医科学研究所の公式ホームページより)

炎症細胞によるがん転移性ニッチ形成メカニズムを解明 - 東京大学医科学研究所
http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/