原因解明や予防・治療法開発に役立つ知見
理化学研究所(理研)は、5月12日、核移植クローン技術を用いて高感受性アレルギーモデルマウスを作り出すことに成功したと発表した。
この研究を行ったのは、理研バイオリソースセンター遺伝工学基盤技術室の小倉淳郎室長らの共同研究グループ。アレルギーの原因解明や予防・治療法開発に役立つ知見だという。
抗原反応性CD4陽性T細胞が増殖し、過剰反応
生体に侵入した様々な抗原は、CD4陽性T細胞と呼ばれるリンパ球の表面にある受容体(TCR)に結合し、生体防御を目的とした様々な反応を引き起こす。アレルギー患者の体内では、この抗原反応性CD4陽性T細胞が増殖して過剰な反応が起きるため、アレルギー症状が現れる。
同共同研究グループは、ダニ抗原や卵白抗原を注射したマウスから取り出した抗原反応性CD4陽性T細胞を用いて、核移植クローンを行い、クローンマウスを作り出した。このCD4陽性T細胞のTCRは、アレルギー誘発抗原に反応するよう遺伝子の再構成を受けているため、クローンマウスの体内ではCD4陽性T細胞のほぼ全てが同じ抗原反応性TCRを持つ。
クローンマウス由来のマウス系統を樹立
作り出されたクローンマウスの体内は、まるでアレルギー患者のように抗原反応性CD4陽性T細胞が多く存在する状態になっている。同共同研究グループはまた、生まれたクローンマウスを正常なマウスと交配することで、クローンマウス由来のマウス系統を樹立。これらのマウスにダニ抗原や卵白抗原を投与したところ、1~2週間以内に気管支喘息やアレルギー性鼻炎に似た重篤なアレルギー症状が起きたという。
同共同研究グループは、今回開発した高感受性アレルギーモデルマウス系統が、アレルギー疾患の発症機構解明や予防・治療法開発への貢献が期待できるものとしている。
(画像はプレスリリースより)

核移植技術でアレルギーマウス誕生 アレルギー疾患の原因解明と治療に期待 - 理化学研究所
http://www.riken.jp/pr/press/2017/20170512_2/