細胞膜を越えてタンパク質を輸送するタンパク質
国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科は、5月8日、細胞膜を越えてタンパク質を輸送するモータータンパク質の詳細な作動原理を解明したと発表した。
この研究を行ったのは、同大バイオサイエンス研究科・塚崎智也准教授らの研究グループ。同研究グループによると、新たな抗生物質の開発が期待できる知見だという。
詳細は不明のままだった「輸送役」
あらゆる生物は、細胞膜によって外界と隔離された細胞システムを保有している。同時に、細胞内で合成されたタンパク質を、細胞膜を通して細胞外に輸送することもまた、生命の維持にとって不可欠な現象となっている。
バクテリアにおけるタンパク質の細胞外への牽引は、細胞膜に存在する分子モータータンパク質「SecDF」が、いわば「輸送役」を果たす。「SecDF」は、水素イオンの濃度の変化による濃度勾配から得られるエネルギーを利用し、タンパク質を牽引すると考えられている。しかし、その詳細は不明のままだった。
新規抗生物質の開発の構造基盤となる
同研究グループは、この「SecDF」の立体構造を、これまでにない高い分解能で決定することに成功。この構造情報を基に、理研・大阪大学・京都大学の研究者らと協力して、分子動力学計算を進めた。結果、膜透過するタンパク質と「SecDF」の結合部位を同定し、水素イオンが通過しうる細胞膜内の道を見出している。
同研究グループはこの研究が、「SecDF」を標的とした新規抗生物質の開発における構造基盤となるものとしている。
(画像はプレスリリースより)

タンパク質を輸送するモータータンパク質の詳細な作動原理を解明 - 奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科
http://bsw3.naist.jp/research/index.php?id=1487