約100人に1人が罹患するとされる統合失調症
慶應義塾大学医学部は、5月8日、同学部精神・神経科学教室の内田裕之専任講師が、統合失調症の治療で使用される抗精神病薬の長期的な効果を検討し、その安全性・有用性・課題点を明らかにしたと発表した。
統合失調症は、約100人に1人が罹患するとされる疾患。適切な治療が、社会的・経済的にも極めて重要となっている。
抗精神病薬は症状を改善し、再発を防ぐのに有用
近年、「抗精神病薬の使用によって、長期的には統合失調症の症状が逆に悪化する」という報告が散見され、その使用の妥当性が議論の的になっている。この状況を受け内田専任講師は、北米・ヨーロッパ・アジアの統合失調症研究の専門家と共にグループを組み、抗精神病薬の治療効果や脳に対する影響に関する過去の報告を吟味。その有用性と安全性の再検証を行った。
再検証の結果、抗精神病薬の使用は症状を改善し、その後の再発を防ぐのに有用であることが改めて明確に示されたと、同研究グループはする。しかしその一方で、一部の患者では抗精神病薬の中止または減量が治療として適切である可能性もあり、今後は患者それぞれに合致した治療法を発見する研究が必要であるという結論を見出した。
抗精神病薬の効果に対する誤解を解く
同研究グループはまた、抗精神病薬が脳の萎縮に対して与える影響については、確定的な知見は得られず、今後のさらなる検討が必要であるとも結論。この検証結果を統合失調症患者およびその家族に周知し、抗精神病薬の効果に対する誤解を解く必要があるとしている。
同研究グループは今回の研究結果について、統合失調症の治療と研究における今後の方向性に寄与するものとしている。
(画像は慶應義塾大学医学部の公式ホームページより)

抗精神病薬の安全性・有用性・課題点を国際的専門家パネルが検証 - 慶應義塾大学医学部
https://www.keio.ac.jp/