脳卒中の全てのタイプにタンパク質HMGB1の関与を解明
岡山大学は4月7日、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の西堀正洋教授(薬理学)の研究グループが、脳内出血による脳組織の障害メカニズムに、血腫によって神経細胞から放出されるタンパク質 High Mobility Group Box-1 (HMGB1)が関与することを明らかにしたと発表した。
これにより、これまで治療薬のなかった脳内出血に対して治療薬の開発が望めることになった。
脳卒中には、脳梗塞、クモ膜下出血、脳内出血の3つのタイプがあり、同研究グループは、これまでの研究で脳梗塞とクモ膜下出血に対して、抗HMGB1抗体治療が有効であることを動物実験で証明している。
抗HMGB1抗体による治療で、神経細胞死と麻痺症状を抑制
今回の研究では、ラットの脳内出血モデルで、神経細胞から放出される細胞核内タンパク質HMGB1が、脳内出血時にどのような動きをするかについて調査し、HMGB1が血液脳関門の破綻と炎症性サイトカイン産生の誘導に働くことが確認された。
また、HMGB1の働きを中和する抗HMGB1抗体による治療効果の検討においては、抗炎症作用を発揮し、その結果、神経細胞死 と麻痺症状を抑えることがわかっている。
さらに、脳内出血後3時間で抗HMGB1抗体の治療を開始しても一定の効果が確認できたことから、臨床治療薬としての開発の可能性につながったもの。
臨床治療薬としての開発に期待
HMGB1は、3種類の脳卒中でいずれの障害プロセスにも深く関わっており、抗HMGB1抗体治療は脳卒中全般に対する有望な急性期治療法となることが期待できるという。
さらに脳卒中の中でも死亡率が高いとされる脳内出血は、重篤な後遺症を引き起こす疾患でもあるが、これまで脳内出血による神経障害を抑制する薬物は開発されていない。
今後抗HMGB1抗体の実用化に向けた研究が進み、臨床治療薬としての開発が待たれる。
(画像は岡山大学ホームページより)

岡山大学 ニュースリリース
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