大腸疾患の病態理解と治療開発に期待
慶應義塾大学医学部内科学(消化器)教室の佐藤俊朗准教授らの研究グループは、2017年12月29日のプレスリリースで、ヒトの正常な大腸粘膜から培養した組織幹細胞をマウス腸管内へ移植後、マウス生体内で生着させ、ヒト正常大腸上皮細胞動態を10ヶ月以上の長期間にわたって観察することに、世界で初めて成功したことを発表した。
この研究によって、ヒトの大腸疾患細胞を研究する新しい手段となり、今後の炎症性腸疾患や大腸がんの根治を目指した正常幹細胞機能の解明と、新規治療法開発へつながることが期待される。
ヒト大腸上皮幹細胞を生きたまま観察
佐藤俊朗准教授らの研究グループは、ヒト大腸粘膜の再生を制御する幹細胞の体外培養に成功した実績があり、また、マウス生体内でがんを再構築する技術を開発してきている。
しかしながら、ヒト成体の正常大腸幹細胞をマウスへ移植する技術は存在しないため、腸疾患や大腸がんの病態理解や治療の開発への研究手法が制限されていた。
今回の研究では、体外で培養した幹細胞移植にゲノム編集技術を応用し、特定のヒト正常大腸上皮細胞の動態をマウスの腸管内で観察する技術を開発、これにより、マウス生体内でヒト大腸上皮幹細胞を生きたまま観察することができ、マウスでの実験結果から存在すると推測されていた生体内でのヒト正常大腸幹細胞を実証した。
この研究成果は、2017年12月28日(米国東部時間)に米国の科学誌である「Cell Stem Cell」のオンライン版に掲載された。
(画像はプレスリリースより)

慶應義塾大学プレスリリース
http://www.med.keio.ac.jp/国立研究開発法人 日本医療研究開発機構
https://www.amed.go.jp/news/index.html