熱帯熱マラリア原虫が、免疫応答を抑える
大阪大学は、11月30日、 マラリアの重症化メカニズムを解明したと発表した。
この成果は、同大微生物病研究所/免疫学フロンティア研究センター・齋藤史路特任研究員らの研究グループによるもの。同研究グループは今回、ヒトに感染する熱帯熱マラリア原虫が、免疫応答を抑えて重症化を引き起こす分子メカニズムを発見。ワクチンや治療薬の開発への貢献が期待できる成果だという。
熱帯熱マラリア原虫、RIFIN
マラリアは、今なお世界三大感染症のひとつであり、毎年およそ350万人が死亡すると報告されている疾患。ヒトに感染するマラリア原虫のうち、特に重症化を引き起こすのは熱帯熱マラリア原虫であり、有効なワクチンの開発は未だ成功していない。
マラリアは、感染しても十分な免疫が獲得されず、何度も感染する。そのため、マラリア原虫にはヒトの免疫システムから逃れるメカニズムが存在すると考えられていた。
同研究グループは今回、様々な抑制化受容体と熱帯熱マラリア原虫に感染した赤血球との相互作用を解析。抑制化受容体LILRB1に結合する分子が、熱帯熱マラリア原虫に感染した赤血球上に発現していることを明らかにした。また、質量分析法で解析することにより、LILRB1に結合する分子が熱帯熱マラリア原虫のRIFINであることも明らかにした。
LILRB1とRIFINの結合を阻害
同研究グループはさらに、RIFINを発現するマラリア原虫の感染赤血球を用いて、B細胞による抗体産生に与える影響を解析。感染赤血球上に発現するRIFINは、B細胞からの抗体産生を抑えることを明らかにした。また、RIFINがナチュラルキラー細胞の活性化を抑制することも発見している。
同研究グループはこの研究により、熱帯熱マラリア原虫には抑制化受容体を介して免疫応答を抑制するメカニズムが存在し、それがマラリアの重症化に関与していることを解明。LILRB1とRIFINの結合阻害が、マラリアワクチンやマラリア治療薬の開発につながるとしている。
(画像はプレスリリースより)

マラリアの重症化メカニズムを解明 - 大阪大学
http://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2017/20171130_1