HP-β-CDと比べ治療効果に優れることを確認
国立大学法人 東京医科歯科大学は、12月4日、ニーマンピック病C型(NPC病)に対する治療薬として超分子ポリロタキサンを開発したと発表した。
この成果は、同大生体材料工学研究所有機生体材料学分野・田村篤志助教、由井伸彦教授らの研究グループによるもの。現在海外で開発されている2-ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン(HP-β-CD)と比べ、治療効果に優れることを確認したという。
臓器の肥大化や神経後退を示すNPC病
NPC病は、ライソゾーム(リソソーム)病の一種であり、細胞内のコレステロール輸送に関わるNPC1の先天的な遺伝子変異によって生じる疾患。細胞内に過剰なコレステロールが蓄積されるため、新生児期から幼児期より臓器の肥大化や神経後退を示す。
同疾患に対する有効な治療法は長らく確立されていなかったが、近年、環状のオリゴ糖HP-β-CDが治療効果に繋がることが判明。現在は、世界各国にてHP-β-CDの臨床試験が進められている。しかしHP-β-CDは、高濃度での投与あるいは脊椎への局所投与が必要であり、副作用の懸念もある。
同研究グループは今回、HP-β-CDの問題を解決すべく、β-シクロデキストリン空洞部に線状高分子が貫通した超分子「ポリロタキサン」を利用することを考案。β-シクロデキストリンを溶出する設計を行った。
様々な疾患治療への展開に期待
これまでの研究において同研究グループは、細胞内分解性ポリロタキサンの数珠状構造によってHP-β-CDの傷害性が低減されること、ならびに細胞内でのポリロタキサンの分解が培養細胞モデルにおいて優れたコレステロール排泄効果を示すことを、確認した。
細胞内分解性ポリロタキサンの作用は、 NPC病に限らず他の疾患でも有効であると、同研究グループは考える。そして今後は、様々な疾患治療への展開が期待できるとしている。
(画像は東京医科歯科大学の公式ホームページより)

超分子構造ポリマーを利用したライソゾーム病治療薬の開発 - 国立大学法人 東京医科歯科大学
http://www.tmd.ac.jp/archive-tmdu/kouhou/20171204_1.pdf