アミロイドベータを減らす既存薬のカクテル
国立大学法人京都大学iPS細胞研究所(以下「CiRA」)は、11月22日、アルツハイマー病病因物質を低減させる既存薬カクテルを見出したと発表した。
この成果は、CiRAの近藤孝之特定拠点助教および井上治久教授らの研究グループによるもの。同研究グループは今回、同疾患の病因物質のひとつであるアミロイドベータ(Aβ)を減らすことができる既存薬の組み合わせ(カクテル)を見出している。
数十年にわたって投与できる安全性が求められる
アルツハイマー病は、認知症の中で最も多い疾患。大脳皮質の神経細胞内におけるアミロイドベータ(Aβ)の蓄積が、病因のひとつであると考えられている。
しかし、アルツハイマー病患者の脳内におけるAβ蓄積は、認知症症状の発生より二十年ほども前から始まる。そのためAβを標的とする治療薬は、数十年にわたって投与できる安全性が求められる。これまで、Aβの産生を行う酵素の作用を直接抑える化合物が数多く作製されてきたが、その多くが副作用の発露により試験が中止されていた。
そこで同研究グループは今回、長期間の内服に関する安全性情報が整備されている既存薬の中から、Aβを低減させる化合物を見出すことに挑戦。患者由来のiPS細胞から迅速かつ大量に高純度の大脳皮質神経細胞を作製する技術を用いて、スクリーニング系の構築研究に取り組んだ。
治療薬開発が、この成果によって進展することを期待
スクリーニングの後、効果のあった化合物群を分類した同研究グループは、相乗的なカクテルを見出した。同定した既存薬カクテルは、アルツハイマー病患者10余名のiPS細胞より分化誘導した大脳皮質神経細胞において、Aβの減少効果を発揮したという。
同研究グループは、長期間の安全性が必要なアルツハイマー病の治療薬開発が、この成果によって進展することを期待している。
(画像はプレスリリースより)

アルツハイマー病病因物質を低減させる既存薬カクテルの同定 - 京都大学iPS細胞研究所
http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/