100%外来性前駆細胞由来腎臓の再生に成功
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)は11月23日、東京慈恵会医科大学の研究グループが、腎臓発生ニッチ内の既存ネフロン前駆細胞を外来性に置き換えて、100%外来性前駆細胞由来腎臓の再生に成功した、と発表した。
研究は、バイオス株式会社との共同研究、AMEの腎疾患実用化研究事業からの支援で実施された。
外来性の前駆細胞のみ成熟できるシステムを開発
日本においては、腎臓のドナー不足のため、ほとんどの腎不全患者が透析により生命を維持している。透析患者は現在約33万人で、食事・生活制限により著しいQOL(生活の質)の低下を招いている。
透析関連医療費も一人当たり年間約500万円以上で、年間総額は1.4兆円以上に達している。
腎臓再生には、患者由来のiPS細胞からネフロン前駆細胞を作り、尿を作る臓器を体内に作り、尿を体外に排泄させる経路を作る、という3ステップが必要である。
他の研究により、ネフロン前駆細胞の作成方法は樹立されており、また慈恵医大の研究グループは尿を体外に排泄させる経路を作るシステムを開発済みであるが、体内に尿を作る臓器を作ることができなかった。
今回研究グループは、受精卵から分化する腎臓前駆細胞と腎臓に分化できる場(ニッチ)を作成し、薬剤存在下で、遺伝子操作によりニッチ内の既存の前駆細胞を除去し、外来性の前駆細胞のみニッチ内で成熟できるシステムを開発した。
このシステムにより、100%外来性のネフロン前駆細胞由来のネフロンを樹立することに成功し、生体内に移植することで血管を誘導することが可能となり、腎機能を持った成熟腎臓を再生することに成功した。
また、ラット―マウスの異種間においても、システムが作動し、腎臓再生が可能であることが分かった。
今後は、ヒトiPS細胞由来ネフロン前駆細胞を用いたヒト臨床応用へ進める、とのこと。
(画像はプレスリリースより)

国立研究開発法人日本医療研究開発機構のプレスリリース
https://www.amed.go.jp/news/release_20171123.html