腸間膜脂肪がクローン病治療の標的に
東京大学医科学研究所と日本たばこ産業株式会社は、10月24日、腸炎における腸間膜脂肪の関与を解明したと発表した。
この成果は、腸間膜脂肪がクローン病治療の標的となる可能性を提示するものだという。
原因不明の炎症性腸疾患クローン病
クローン病は、原因が不明な炎症性腸疾患のひとつ。口腔から肛門までの全消化管において炎症性病変が生じるが、特に回腸と大腸に好発する。抗TNFα製剤などの治療薬が上市されてはいるが、根本的な治療薬は未だ存在しない。
多くのクローン病患者では、腸間膜脂肪の蓄積が見られる。そのため腸間膜脂肪は、慢性腸炎に関与することが示唆されていたが、具体的な検証はこれまでにほとんど行われていなかった。
東京大学医科学研究所と日本たばこ産業の共同研究グループは、この点に着目。3次元培養オルガノイドより構築した単層の腸管上皮細胞を成熟脂肪細胞と共培養すると、双方の細胞群に炎症反応が惹起されることを明らかにした。またこの応答は、NF-κBやSTAT3の阻害剤で抑制されたことから、少なくともこれらの2つの経路を介して生じていることも、明らかにしている。
腸管上皮細胞における炎症反応の誘導に直接関与
東京大学医科学研究所と日本たばこ産業は、腸間膜に存在する脂肪細胞が、腸管上皮細胞における炎症反応の誘導に直接関与することとが、今回の研究により示唆されたとする。また、脂肪細胞の性質を改善するアプローチが、新たなクローン病治療法へ結びつく可能性についても、期待できるとしている。
なおこの研究成果は、『Cell』誌と『Lancet』誌が共同運営するオープンアクセス科学誌『EBioMedicine』2017年9月号に掲載された。
(画像は東京大学医科学研究所の公式ホームページより)

腸炎における腸間膜脂肪の関与を解明 - 東京大学医科学研究所
http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/171024ebiom.pdf