バイオマーカーの開発に期待が持てる成果
理化学研究所は、10月24日、肝障害後に誘導される急性相タンパク質オロソムコイド「Orm1」が、細胞周期の進行を促進し、肝細胞の増殖を制御する機能を持つことを発見したと発表した。
この成果は、理研ライフサイエンス技術基盤研究センター微量シグナル制御技術開発特別ユニット・小嶋聡一特別ユニットリーダーらの共同研究グループによるもの。肝疾患の診断や予後予測バイオマーカーの開発に期待が持てる成果だという。
極めて高い再生能力を持つ肝臓
肝臓は、ヒトの臓器の中では例外的に、極めて高い再生能力を持つ。このため、肝障害時や肝切除術後の肝細胞喪失などに対しても、残された肝臓中の肝細胞が肥大・増殖することで、肝容積および肝機能を回復し、生体の恒常性を維持することができる。
この肝再生は複雑に制御された現象であり、詳しく解明できれば、肝不全の診断法や治療法の開発につながると期待されていた。
共同研究グループは今回、部分的に肝臓を切除した肝再生マウスモデルを用いて、肝再生過程の遺伝子発現変化を網羅的に解析。その結果、肝細胞が活発に分裂する部分肝切除48時間後に「Orm1」の発現がピークになり、細胞周期を活性化する遺伝子群を制御することが明らかになった。
細胞の増殖に重要な役割を果たしている「Orm1」
今回の発見は、「Orm1」が肝再生の上流制御因子のひとつであり、肝再生や肝がんの発がん過程において肝細胞の増殖に重要な役割を果たしていることを示すものであると、共同研究グループはする。そして、「Orm1」を創薬標的とした肝疾患の新治療法の開発にも、期待が持てるとしている。
(画像はプレスリリースより)

肝細胞の増殖を促進する肝再生制御因子Orm1 肝疾患の診断・予後予測バイオマーカー開発に期待 - 理化学研究所
http://www.riken.jp/pr/press/2017/20171024_3/