血液細胞の分化に必要な遺伝子の発現
理化学研究所(以下「理研」)は、9月7日、血液細胞の分化に必要な遺伝子の発現をオンにするメカニズムを解明したと発表した。
この成果は、理研ライフサイエンス技術基盤研究センター細胞機能変換技術研究チームの鈴木貴紘研究員らの共同研究チームによるもの。新たな白血病治療法の開発が期待できる成果だという。
DNAメチル化とDNA脱メチル化
人間の体には300種類以上におよぶ細胞が存在するといわれているが、それら細胞はそもそも全て同じ遺伝子のセット(ゲノム)を持つ。各々の細胞が異なる機能を発揮するためには、その細胞に必要な遺伝子だけが「オン」になり、それ以外の遺伝子は「オフ」のまま抑制される必要がある。
遺伝子発現の「オン」と「オフ」を決める「スイッチ」のひとつが、DNAメチル化とDNA脱メチル化だ。DNA上には遺伝子の発現を制御する領域があり、この領域がメチル化されると遺伝子の発現は「オフ」に、脱メチル化されると「オン」となる。しかし、メチル化から脱メチル化への切り替えがどのように制御されているかは、不明のままだった。
RUNX1とDNA脱メチル化の関係を調査
共同研究チームは今回、RUNX1というタンパク質とDNA脱メチル化の関係を調査。血液細胞ではないHEK293T細胞にRUNX1を強制的に発現させたところ、RUNX1が結合した領域でDNA脱メチル化が誘導された。メカニズムを精査したところ、DNAに結合したRUNX1は脱メチル化に関わる酵素群を引き寄せることが明らかになっている。
また同チームは、iPS細胞が血液細胞へと分化する際、RUNX1によるDNA脱メチル化が重要な働きをしている可能性も示唆。RUNX1によるDNA脱メチル化と白血病発症との関係を明らかにすることで、新たな白血病治療法の開発が期待できるとしている。
(画像はプレスリリースより)

血液細胞の分化に必要な遺伝子をオンにするスイッチ RUNX1がDNA脱メチル化を誘導する機構を解明 - 理化学研究所
http://www.riken.jp/pr/press/2017/20170907_1/