新たな治療薬の開発につながることに期待
東京大学医学部附属病院精神神経科は、9月11日、統合失調症患者を対象として「ベタイン」の有効性や安全性を調べる臨床試験を実施すると発表した。
「ベタイン」は、広く食用の魚介類や植物に存在し、人体ではホモシステインをメチオニンに変換する酵素の基質となる化合物。試験で良い結果が得られた場合、新たな治療薬の開発につながることが期待できるという。
統合失調症患者は「ベタイン」濃度が低下
統合失調症は、幻覚や妄想などの症状および生活の障害を呈する精神疾患。治療法としては、抗精神病薬や心理社会的治療が存在する。しかし実際には、これらの治療法で症状を十分にコントロールできない場合が少なくない。
同院精神神経科は以前、統合失調症患者で血液中の「ベタイン」濃度が低下していることを発見。この「ベタイン」を補うことで治療効果が得られることを期待し、今回の臨床試験を計画したという。
「ベタイン」は、ホモシスチン尿症の治療薬として保険適応のある医療用製剤が存在する。今回の臨床試験では、この医療用製剤を用いるとしている。
有効な治療選択肢の一つになる
今回の臨床試験では、統合失調症患者が参加者として募集される。同院はこれまでも、通院中の患者から参加者を募っていたという。しかし9月11日からは、より広範に参加者を募るとしている。
同試験で良い結果が得られた場合、同院は「ベタイン」を統合失調症医療で用いるべく開発計画を推進。将来的に医療で用いられるようになった場合、これまでの治療法で十分に改善しなかった患者にとって有効な治療選択肢の一つになることが、期待できるとしている。
(画像は東京大学医学系研究科・医学部の公式ホームページより)

統合失調症患者に対するベタインの治療効果を調べる臨床試験を行います - 東京大学医学系研究科・医学部
http://www.h.u-tokyo.ac.jp/vcms_lf/release_20170911.pdf