治療時の酸化ストレスで誘導されるネクローシスを抑制
理化学研究所は2018年2月21日のプレスリリースで、袖岡有機合成化学研究室の闐闐孝介専任研究員、袖岡幹子主任研究員が在籍する共同研究チームが、ラット虚血性心疾患モデルにおいて心筋に保護効果を示すIM化合物「IM-17」を開発したと発表した。
共同研究チームはIM-54をベースにして、新たにIM-17を開発し、IM-17が虚血再灌流障害から心筋を保護し、ラットモデルにおいて不整脈による突然死を著しく抑制することを見いだした。
心疾患は日本人の死因の第2位
虚血性心疾患を含む心疾患は、がんに続き日本人の死因の第2位のとなっており、虚血性心疾患は、心筋に血液を運ぶ血管の閉塞により、血流が遮断されて虚血状態になることによって生じる疾患であり、狭心症や心筋梗塞などが知られている。
虚血性心疾患の治療時に問題となっている虚血再灌流障害について、その発生メカニズムは完全に分かっていないが、活性酸素種の大量発生により損傷を受けた部位では細胞が膨潤した「ネクローシス」がみられることが知られている。
さまざまな臓器での保護効果にも期待
これまでに、袖岡主任研究員らは、酸化ストレスで誘導されるネクローシスを抑制する化合物としてIM化合物、IM-54を開発していた。
今回開発したIM-17の成果は、虚血性心疾患の新しい治療薬や治療法の開発に貢献することが期待でき、また、虚血再灌流障害は心臓だけではなく、脳や腎臓などさまざまな臓器でもみられることから、他の臓器での保護効果も期待できる。
理研は、共同研究チームが進めているIM化合物の作用機序解明において、虚血再灌流障害の詳しいメカニズムが解明されれば、新しい治療法の開発につながると考えられると述べている。
(画像は理化学研究所のサイトより)

理化学研究所プレスリリース
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