生物はなぜ眠るのか
東京大学大学院の研究グループは2月9日、理化学研究所と共同で、睡眠中に海馬の神経回路がクールダウンされる仕組みを解明したことを発表した。
これまでの研究において、記憶は海馬の中で、長期増強(以下、LTP)が生じて保存されることが知られていた。
LTPはニューロン同士の繋がりが強まる現象であるが、あるレベルに到達するとそれ以上の記憶ができなくなるため、このLTPの飽和を避ける仕組みがあることが予想されていたが、まだ不明だった。
そこで、同研究グループは、睡眠中のマウスからニューロン同士の繋がりの強さを計る指標である電位(以下、fEPSP)を記録。すると、睡眠の経過とともにfEPSPの減弱が認められたという。
また、海馬から発生する「sharp wave ripple」(以下、SWR)を選択的に阻害すると、fEPSPの減弱が認められなかったとしている。
老年性症状を回復できる可能性についても模索
さらに、7時間阻害を続けると睡眠を取っているのにも関わらず、マウスの脳回路はクールダウンせず、まるで寝不足のような状態になることがわかった。
また、SWRは直前の記憶に関わったニューロンはクールダウンしないことも認められたとしている。
同研究グループは、このことから、生物はなぜ眠るのかという根源的な謎の1つに迫り、また、超高齢化社会を迎える現在において、SWRの観点から老年性症状を回復できる可能性についても模索していくとしている。
(画像は東京大学大学院薬学系研究科HPより)

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