ヒトT細胞白血病ウイルス1型の新たな感染維持機構を解明
京都大学、熊本大学、九州大学の共同研究グループは、1月23日、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(以下、HTLVー1)の新たな感染維持機構を解明したことを発表した。
HTLVー1は、主にCD4陽性Tリンパ球に感染して、がん化し、治療抵抗性の成人T細胞白血病(以下、ATL)を引き起こす。しかし、多くの場合は感染しても発症するのはごく一部で、その潜伏期間は約30~50年と言われている。
HTLVー1は、発がん作用を有するウイルスタンパク質Taxの遺伝子を持つことがわかっているが、感染細胞やATL細胞では、ほとんど検出されず、その役割については不明だった。
新しい複合免疫療法の開発につながると期待
そこで共同研究チームは、Taxの働きを観察するために、Taxが作動すると蛍光タンパク質が産生されるATL細胞株を作成。すると、ごく一部の細胞で平均して19時間、Taxが機能していることが確認できたという。
また、Taxの働きを阻害したところ、ほとんどの細胞が死滅したことから、ATL細胞の生存にTaxが必要であることがわかったとしている。さらに、感染細胞にストレスが加わると、Taxを産生する細胞が増加することが認められた。
共同研究チームは、Taxを活性化する機構は感染細胞のがん化に関与していると考えられることから、さらに解析を進めて、Taxの発現誘導とTaxワクチンを併用する新しい複合免疫療法の開発につながるとしている。
(画像はプレスリリースより)

九州大学 研究成果
http://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/212