創薬研究に重要な基盤情報を提供しうる成果
早稲田大学は、2018年1月12日、不活性化した染色体領域であるヘテロクロマチンの基盤構造を、世界で初めて明らかにしたと発表した。
この成果は、同学理工学術院胡桃坂仁志教授と町田晋一研究院助教、沖縄科学技術大学院大学マティアス・ウォルフ准教授と滝沢由政博士らの研究グループが、基礎生物学研究所中山潤一教授と共同で実施した研究によるもの。創薬研究に対して重要な基盤情報を提供しうる成果だという。
最新のクライオ電子顕微鏡法技術を用いて解明
真核生物の遺伝情報であるゲノムDNAは、ヒストンと呼ばれるタンパク質との複合体として存在している。このヒストンは、細胞核の中に折りたたまれて収納されており、その折りたたまれ方の違いにより、ゲノムDNAの読み取りがオン(活性化)になったりオフ(不活性化)になったりする領域が作られる。
染色体不活性化領域であるヘテロクロマチンでの遺伝子オフ機構は、生命現象の根幹と考えられてきた。また、ヘテロクロマチンにおける恒常的な遺伝子オフの破綻が、ある種のがんや感染症などを引き起こす原因となるとも考えられていた。しかし、その実態は未解明のままであったため、同研究グループは今回、最新のクライオ電子顕微鏡法技術を用いて解明に挑んでいる。
がんや感染症が発症する機構を理解
この研究の結果、ヒト染色体で遺伝子が恒常的にオフになっているヘテロクロマチンの基盤構造を、同研究グループは世界に先駆けて解明した。この成果は、がんや感染症が発症する機構の理解のみならず、これらをターゲットとした創薬研究に対しても重要な基盤情報を提供するものであると、同研究グループはしている。
なおこの成果は、2018年1月11日正午(現地時間)発行の米国科学誌『Molecular Cell』オンライン版に掲載された。
(画像はプレスリリースより)

世界初・不活性染色体の基盤構造を解明 創薬研究に重要な基盤情報を提供 - 早稲田大学
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