医師主導臨床試験を開始
東京大学医科学研究所附属病院は、9月23日、皮膚自壊悪性腫瘍からの出血に対する止血剤(モーズ軟膏)の医師主導臨床試験を開始したと発表した。
皮膚自壊悪性腫瘍は、固形癌の浸潤や転移により皮膚に露出した癌を指す。同試験は皮膚自壊悪性腫瘍の難治性の出血を有する患者を対象に実施されている。
治療開発はほとんど行われていなかった
体表に近い癌やリンパ節転移、また皮膚転移は、体表に露出して皮膚自壊悪性腫瘍となる場合がある。自壊腫瘍を起こす割合は、海外においては転移を有する全癌患者の5~15%に及ぶという報告もあるという。このような自壊腫瘍は、特に乳癌・頭頸部癌・皮膚癌に多く見られる。
自壊腫瘍に伴う症状は、滲出液・出血・臭気など多岐にわたる。これらの症状は、患者にとって社会生活の妨げとなりQOLを著しく損なう可能性があるが、治療開発はこれまでほとんど行われていなかった。
モーズ軟膏を用いて止血処置
東京大学医科学研究所附属病院が今回開始した試験では、繰り返す難治性の出血に対して、モーズ軟膏を用いた止血処置が行われる。
モーズ軟膏は、1930年代にアメリカで開発された塩化亜鉛を主成分とし、タンパク凝集作用を有する軟膏。日本国内では2005年以降、皮膚自壊悪性腫瘍の症状を緩和する目的でモーズ軟膏を用いた報告が学会で報告されるようになっている。
この処置により、再出血のリスクを一定期間軽減し、患者のQOLの改善が見込めると同院は考えている。

皮膚自壊悪性腫瘍からの出血に対する止血剤(モーズ軟膏)の医師主導臨床試験を開始 - 東京大学医科学研究所附属病院
http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/