新構造解析法で新たな研究開発へ
理化学研究所(以下、理研)放射光化学総合研究センター米倉生体機構研究室の米倉功治准主任研究員らのチームは、生体内のタンパク質などの機能発現を担う電化情報を解析することができる高精度の構造解析手法を開発した。
この内容は、2016年8月24日付けで、国際結晶学会発行の科学雑誌「Journal of Applied Crystallography」のオンライン版に掲載され、10月発行の同誌に掲載される予定。
現状と問題点
タンパク質の機能を明らかにすることは、各分野の研究で非常に重要な研究である。これまでは、タンパク質の結晶を作製し、X線回折測定を行うか、タンパク質溶液を急速に凍結したものを電子顕微鏡で観察する、低温電子顕微鏡法の単粒子解析が一般的な方法であった。
しかし、これらの方法は、それぞれに、重要な機能をもつ膜タンパク質や巨大タンパク質複合体は結晶作製が難しいという点や、得られる構造の空間分解能が低いという点に問題があった。
今後への期待
近年、電子線検出カメラと画像解析の技術革新により、X線結晶構造解析に匹敵する空間分解能で、大きなタンパク質の構造解析が可能になっている。
そこで、同研究チームは、電子線に対する錯乱因子を精密に求めることができるソフトウェア「ScatCurve」を開発した。さらに、部分電荷の最適化とその解析手法の開発を行い、実測データと照らし合わせ、エラーを最小化していくことで、有用性と汎用性を高め、実用的な手法として完成させた。
今後、本成果を新しい基盤技術として確立することができれば、生命科学の発展や医療、創薬、工学などの分野への貢献が見込まれ、新たな解明、開発にもつながることが大いに期待できる。

理化学研究所プレスリリース
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