別角度からの治療に期待
アルコール依存症に対する治療薬として日本新薬が今年5月から販売を開始したのが、「レグテクト」(アカンプロサートカルシウム)だ。中枢神経系に作用し、飲酒に対する欲求を抑える。フランスを始め欧米では広く使用されていたが、国内では承認されていなかった。2010年に厚労省から開発要請を受け、今年販売に至った。
これまで国内で使われてきたのは、アルコールの分解を阻害し、少しの量でも吐き気などの不快症状を引き起こすタイプの抗酒薬だった。不快症状を感じることで常習的な飲酒への予防にはなるが、それだけで精神的な依存から抜け出すことはできない。
アルコール依存からの回復とは、「飲まなくても健全な生活を送れる」こと。そのためには、飲みたい、という欲求自体を抑えなくてはならない。今回発売された「レグレクト」は、それを助けてくれる断酒補助剤だ。今までの治療では回復できずにいる患者にとって、新しい希望となるだろう。
アルコール依存症とは
アルコール依存症とは、飲酒に対する強い欲求に抵抗できなくなってしまう精神疾患。国内の患者数は推定80万人ほどと言われている。
原因となるのは常習的な飲酒だ。過度の飲酒を続けるうちに、どれだけ飲むか、いつ飲むかなどを自分でコントロールできなくなってしまう。体内からアルコールが切れてしまうと、手の震え、多汗、不眠などの睡眠障害、幻聴や幻覚などの禁断症状が現れる。そのため、さらにアルコールを常習的に摂取するという悪循環に陥ってしまう。
難しい治療
アルコール依存症は、薬だけで治せるものではない。自分自身と向き合うだけでなく、周りの助けが欠かせない。いったん回復しても、生涯断酒しなければ再発してしまう。とにかく飲酒に対する欲求を抑えることが重要となる。専門医にかかり薬を処方してもらうだけでなく、同じ悩みを抱える人とのグループ療法を行うなどの治療が必要だ。回復したと言えるまでには、長い時間がかかる。
どれくらい効果があるのか
臨床試験では、1日3回の服用を半年間続けた結果、その後服用を中止した半年間の完全断酒率は47.2%。従来の治療で半年間断酒を継続できるのは約40%であることを考えると、有効性はあると言えるだろう。もちろん、医師やカウンセラーによる精神療法などは必要だが、そういった治療をより効果的なものにしてくれることが期待できる。

日本新薬NEWS2013
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