血液悪性腫瘍治療に大きな進歩
2016年7月7日、佐賀大学医学部の進藤岳郎助教らの研究グループが、白血病をはじめとする血液悪性腫瘍患者への同種造血幹細胞移植後に起きる、「移植片対宿主病(以下、GVHD)」への対応として、皮膚がんの治療薬である、「トラメチニブ」を投与することにより、「移植片対腫瘍効果(以下、GVT効果)」の有効性を維持しながら、GVHDを有意に抑制することを、マウス実験により、世界で初めて発見したと発表した。
移植後の難しさ
GVHDは、同種造血幹細胞移植後、白血球がうまく患者の体内を回るようになると、白血球の他者を攻撃するという性質により、患者の体を攻撃することにより起こる。
また、白血球はこの性質により、がん細胞も攻撃し、縮小、消滅することができると考えられており、GVT効果と呼んでいる。
現状では、GVHDを抑制するために、免疫抑制剤を投与しているが、それにより、GVT効果も弱めてしまうため、同種造血幹細胞移植の有効性は、GVT効果を損なうことなく、GVHDを抑制することによって得られる。
また、MEK阻害剤「トラメチニブ」は、細胞増殖シグナル伝達経路ERK MAPキナーゼ経路に存在するリン酸化酵素MEKを阻害し、がん細胞の増殖を抑制する。
今後への期待
今回の実験結果は、「トラメチニブ」は、GVHDを回避、もしくは減少させるための有効な選択肢であり、基本的な血液悪性腫瘍の再発を抑制することを示している。しかし、この結果が人間にそのまま有効であるかは不明である。
ただ、「トラメチニブ」はすでに認証取得済みの実績のある薬剤であるため、臨床研究、認証、治療へと、速やかな進歩が期待される。

JCI INSIGHT
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