アミロイド構造のみを区別して酸素化する光触媒
2016年6月28日、東京大学大学院薬学系研究科・金井求教授、ERATO金井触媒分子生命プロジェクト・相馬洋平グループリーダー、谷口敦彦特任研究員らの研究グループは、アミロイドβペプチド(Aβ)の凝集体が持つアミロイド構造のみを区別して酸素化する光触媒を開発し、Aβの凝集と細胞毒性を抑えることに成功したと発表した。
背景
アルツハイマー病は認知障害を主な症状とする難治性疾患であり、日本のみならず、世界的にもアルツハイマー病の克服は極めて重要な課題である。その発症には、Aβ凝集体が神経細胞を傷つけることが関与していると考えられているため、Aβの凝集を抑える治療法の開発が盛んに進められてきた。
研究グループは、これまでにもAβを酸素化することで凝集を抑える光触媒の開発に成功していたが、Aβだけでなく、生体内で重要な役割を果たしている他の生体分子も同時に酸素化してしまうという問題点があった。
研究成果
研究グループは、Aβに結合したときのみ酸素化する選択性の強い光触媒が必要であると考え、Aβ凝集体に特有なアミロイド構造のみを区別して酸素化する光触媒を開発した。
開発した触媒を用いてAβを酸素化すると、Aβ凝集体のさらなる凝集が抑えられ、Aβを認識するペプチドとの結合により、細胞存在下でもアミロイド構造を区別したAβの酸素化が進行し、Aβ凝集体による細胞毒性が軽減されることが明らかとなった。
今後、エネルギーの小さい長波長の光でもAβ凝集体を酸素化し、凝集を抑えることのできる触媒へと改良を進めるとともに、生体内でもAβの凝集と細胞毒性を抑えられるかを明らかにし、将来、触媒自体を医薬として利用するという新しい治療法が期待される。
(画像はプレスリリースより)

科学技術振興機構 プレスリリース
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