ALSの新規治療法として期待
東京大学大学院医学系研究科は6月28日にALS(筋萎縮性側索硬化症)のマウスで行った実験の成果をイギリスの「Scientific Reports」のオンライン版に掲載したことを翌29日に発表した。
東京大学大学院医学系研究科は2013年10月にマウスを使って、その脳や脊髄のニューロンのみにADAR2遺伝子を発現させるアデノ随伴ウイルス(AAV9)ベクターを投与する実験を行い、その進行を抑えることに世界で初めて成功している。
また、ADAR2酵素の発現低下が異常なカルシウムの流入が起こりこれがALSの原因の一部とされる孤発性ALSの運動ニューロン死に関わっていることを証明している。
臨床試験へと大きく前進
今回発表されたのはこのカルシウムの流入を抑えることのできる抗てんかん薬「ペランパネル」(製品名フィコンパ:エーザイ株式会社)を90日間ALSマウスに投与し、運動ニューロンの変成脱落が抑えられ、TDP-43タンパクの異常が回復・正常化したことだ。
この「ペランパネル」は以前からてんかん治療に使用されていることから、臨床試験への危険度も低いと期待できるとされている。
ALSは有効な治療方法がない神経変異性の疾患で、日本では1974年に難病指定されている。ALS治療薬としてはリルゾールなどがあるが、進行を遅らせる作用はあるが回復の効果はなかった。
この発表はALSの根本治療に有効な新規治療法として期待されている。
(画像はプレスリリースより)

経口AMPA受容体拮抗剤による筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療法確立
http://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/press.html