敗血症治療へ新しい光
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)薬理学の西堀正洋教授、和氣秀徳助教らの研究グループは、血漿タンパク質Histidine-rich glycoprotein (以下、HRG)が、循環血中の好中球と血管内皮細胞の静穏化維持に極めて重要な働きをする因子であることや、敗血症病態のカスケードが血中HRGの低下を起点として進行することを世界で初めて解明した。
研究内容概要
HRGは、肝臓で産生され、血液中に分泌される糖タンパクである。研究グループによると、HRGが著しく低下したマウスの敗血症病態モデルに、HRGを注射で補充することで、循環血中の好血球の形態を正円形状態に保つことを確認。
また、正円形に維持された好血球は、活性酸素分子種の産生レベルが低く、血管内皮細胞への接着も抑制されていることが確認された。これらの働きにより、毛細血管通過性がスムーズになり、不必要な血管壁障害を最小限に抑えていることがわかった。
以上の内容から、血漿HRGは、極めて重要な役割をする因子であり、これを補充することで、劇的な生存維持効果があることが見いだされた。
今後への期待
敗血症は、細菌、ウイルス、真菌、寄生虫などによる感染が原因で発症するため、それぞれの患者が、何に感染しているかで使われる薬が変わってくる。軽症の敗血症の時点で早期発見できれば保存的加療で治療が可能だが、重篤な状態である、敗血症ショックの状態では、ICUなどでの速やかな処置が必要となる。
今回の研究結果により、早期に補充的HRGの投与を行える治療薬の開発が進めば、全く新しい治療法が提案されることになる。同チームでは、すでにヒト敗血症患者の血中HRG測定でも、同程度の著明な低下を確認しており、また、ヒト組み換えタンパクの製造にも成功していることから、今後の研究、開発の成果が大いに期待される。

岡山大学プレスリリース
http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id401.html日本医療研究開発機構プレスリリース
http://www.amed.go.jp/news/release_20160617-02.html