神経障害性疼痛のための新たな治療薬
2016年6月17日、九州大学と日本ケミファ株式会社は、神経障害性疼痛に対する新規治療薬として、P2X4受容体アンタゴニスト(NC-2600)について、2016年6月から国内における第I相試験を開始したことを発表した。
背景
神経障害性疼痛は、神経の損傷や機能異常によって生じる痛みで、神経損傷の原因となる疾患が治っても痛みだけが慢性的に持続する難治性の疼痛であり、神経の損傷部位により末梢性神経障害性疼痛と中枢性神経障害性疼痛に分類されている。
また、神経障害性疼痛は、病態や発症機序が複雑で多様なため、非ステロイド性抗炎症薬などの鎮痛薬の効果がほとんど期待できないことが知られている。
神経障害性疼痛を有する患者は、過酷な痛みに悩まされ辛い日常生活を送らざるをえない一方で、治療薬の選択肢が少なく、新たな治療薬開発が期待されている。
経緯
2003年、井上副学長の研究グループは、中枢神経系において。P2X4受容体の異常な発現増加を確認するとともに、P2X4受容体の働きによって神経が異常に興奮し、通常痛みを感じない刺激でも痛みを引き起こすことを明らかにした。
また、P2X4受容体の選択的アンタゴニストの投与により強い疼痛抑制効果を確認したことから、この作用機序が新たな神経障害性疼痛の治療薬につながる可能性を見出した。
今回開発したP2X4受容体アンタゴニストはP2X受容体の7つのサブタイプ(P2X1~7)のうちの1つで、世界で初めてグリア細胞をターゲットにした疼痛治療薬であり、末梢性の神経障害性疼痛に加え、中枢性の神経障害性疼痛にも効果が期待されている。
(画像はプレスリリースより)

科学技術振興機構 プレスリリース
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20160617-3/index.html