脂肪の酸化が「がん」発症に極めて重要な役割
九州大学は6月14日、九州大学大学院薬学研究院の山田健一教授らの研究グループが、『脂質ラジカル』の中間体を検出する技術「蛍光プローブ」を開発、『脂質ラジカル』が肝細胞がんの発症に密接な関連性があることを発見したと発表した。
『脂質ラジカル』とは
『脂質ラジカル』は、体内の脂肪が酸化する過程で発生する中間体。非常に高い反応性を示し、連鎖反応をもって傷害を爆発的に拡散、増幅させるといわれている。これまでも「脂肪の錆び」である『脂質ラジカル』と、生活習慣病など様々な疾患発症との関連が推測されていたが、その反応性の高さから、検出や解析は困難とされてきた。
選択的な反応で発光「蛍光プローブ」
このたび研究グループは、『脂質ラジカル』と選択的な反応をすることで緑色に発光する「蛍光プローブ」の開発に成功。「蛍光プローブ」を用いた肝細胞がんモデル動物における研究の結果、がん発症の初期段階に『脂質ラジカル』が発生すること、また、その後のがん形成にも極めて重要な役割を果たしていることを確認した。
『脂質ラジカル』の抑制がカギ
実際、モデル動物に抑制物質を投与して、『脂質ラジカル』の生成を抑制したところ、がん発症が有意に減少したという。今回開発に成功した技術の応用により、「脂肪の錆び」を標的とした新薬の開発や、予防法の発見、治療法の確立などが期待される。

九州大学 プレスリリース
http://www.kyushu-u.ac.jp/f/28174/16_06_14.pdf日経プレスリリース
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