がん治療薬ADCの精巧な設計を可能にする画期的な方法
国立研究開発法人国立がん研究センター、国立研究開発法人理化学研究所、株式会社島津製作所の共同研究グループは、抗体薬物複合体(ADC)からの薬物放出・分布を可視化した世界初の評価方法を確立したと発表した。
抗体と薬物を結合 細胞内で直接薬を放出
ADCは抗体と薬物を結合させ、付加した薬物をがん細胞内へ直接運ぶことを目的に開発された。がん細胞を効率的に攻撃しながら、正常な細胞への影響を避けることを可能にした新しいタイプのがん治療薬。米国を中心に50種類以上の臨床開発が進められている。
ADCの効果を正確に評価する方法
これまでは、ADCが「がん細胞に到達、細胞内で薬を放出する」という明確な評価方法がなく、薬放出前後の状態変化を評価することができなかった。このたび確立された手法では、質量顕微鏡を使って実際に薬物の放出を確認することに成功。また、放出された薬がどこにどの程度分布しているかの分析もできる。放射性同位元素で標識をせずに評価ができるため、より正確に、さらに低コストでの薬剤分布の確認を可能とした。
今後のADC開発に有効な手法として期待
今回の研究で確立された腫瘍内薬物分布の方法は、ADCががん組織に到達して、がん細胞まで付加薬物が届けられる条件を簡易に導き出すための正確な方法であり、ADCの今後の研究開発において、精巧な薬剤デザインの有効な手段の1つとして期待が高まる。

国立研究開発法人国立がん研究センター
http://www.ncc.go.jp/jp/information/press_release_20160509.html国立研究開発法人理化学研究所
http://www.riken.jp/株式会社島津製作所
http://www.shimadzu.co.jp/news/press/n00kbc00000093gj.html日経プレスリリース
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=413162&lindID=5