若年性パーキンソン病原因遺伝子産物 関連
2016年5月6日立教大学理学部・岡敏彦教授のグループは、徳島大学藤井節郎記念医科学センター・小迫英尊教授のグループとともに、環状AMP(cAMP)がタンパク質へのリン酸化を介してPINK1とParkinのミトコンドリアへの標的化を制御し、ミトコンドリア品質管理を抑制することを発見したと発表した。
背景
私たちの体で使われるエネルギーの通貨として働くATPの多くは、ミトコンドリアで産生されるが、ミトコンドリアはエネルギーを産生する際に生じた活性酸素種(ROS)で障害を受けることがあり、障害が蓄積したミトコンドリアは積極的に分解・排斥される。
このような機構をミトコンドリアの品質管理と呼び、若年性パーキンソン病原因遺伝子産物(PINK1とParkin)が重要な役割を果たしており、品質管理機構はパーキンソン病の分子メカニズムを理解するために重要であるにも関わらず、細胞内の環境が与える影響についてはわかっていなかった。
研究成果
研究グループは細胞内の情報伝達物質の1つであるcAMPに着目して研究を進めたところ、cAMPの細胞内濃度を上昇させるとPINK1とParkinが障害を受けたミトコンドリアに標的化しなくなることを発見した。
さらに、PKAによりリン酸化修飾を受けるミトコンドリアタンパク質を調べたところ、cAMPがミトコンドリアタンパク質(MIC60とMIC19)をリン酸化修飾することで生じることを突き止めた。
今回の研究成果は、パーキンソン病の病態のさらなる理解に貢献すると考えられる。また、細胞小器官の維持が目的だと考えられてきたミトコンドリア品質管理が、細胞内環境に応じた調節機構の発見により、環境が大きく変化する細胞分化の際にも新たな役割を果たすことを示唆している。

科学技術振興機構 プレスリリース
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20160506/index.html