ワセリンで発症予防の可能性
理化学研究所は26日、保湿剤(ワセリン)を塗布することで、アトピー性皮膚炎の発症を予防できる可能性があるとする研究成果を発表した。
原因遺伝子を特定 メカニズムを解明
アトピー性皮膚炎は日本を含めた先進国の乳幼児を中心にみられる炎症性皮膚疾患で、遺伝要因と環境要因の複合により発症すると言われている。繰り返し現れる強い痒みを伴う湿疹と、免疫グロブリン(IgE)の産生上昇などによる「アレルギー様反応」が問題とされているが、このたびの解明により、発症予防や新たな治療法の確立に期待ができる。
モデルマウスの開発に成功 発症経過を忠実に再現
理化学研究所の統合生命医科学研究センター疾患遺伝研究チームの吉田尚久氏、安田琢和氏らの共同研究チームは、遺伝要因を明らかにするため、エチルニトロソウレアという化学変異源をマウスに投与。アトピー性皮膚炎を自然発症する突然変異マウスを作製した。
角質による皮膚バリアに機能障害
50家系3000匹のマウスにおいて表現型解析を行った結果、細胞の増殖や分化に重要な「サイトカイン」のシグナル遺伝子「JAK1」分子の遺伝子配列に突然変異が生じていることを発見。皮膚バリアの破壊により、真皮の自然免疫系の活性化を招き、アトピー性皮膚炎が発症することを突き止めた。この研究成果を基に、マウスに対し、発症する4週間前からワセリンを1日おきに塗布したところ、2ヶ月以上にわたってアトピー性皮膚炎の発症を予防することが分かった。
人間の場合も同様の遺伝子異常 ワセリンで機能の改善に期待
その後の調査で、人間の患者の場合も、6人のうち4人の表皮細胞で「JAK1」の活性化が起こっていることが明らかになった。人間の場合は、発症後での診断にはなるが、アトピー性皮膚炎のメカニズムの解明と、ワセリン塗布による発症予防の可能性が示されたことになる。
理化学研究所は今後、アトピー性皮膚炎発症に関わる複数の要因についてさらに研究を進め、発症予防法や治療法の確立に期待ができるとしている。

理化学研究所
http://www.riken.jp/