難治性眼疾患の進行抑制に期待
2016年4月22日、京都大学大学院医学研究科・池田華子准教授、生命科学研究科・垣塚彰教授らの研究グループは、医学研究科眼科学教室・吉村長久特命教授、ダイトーケミックス(株)と共同で、神経保護効果をもつ化合物KUS剤が、緑内障の進行を抑制することを、3種類のモデルマウスを用いて明らかにしたことを発表した。
背景
緑内障は、日本において視覚障害原因の第1位の原因疾患であり、はっきりとした症状がある患者数は300~400万人と推定されている。
緑内障は、網膜の神経節細胞と神経線維が変性・脱落することにより、視野障害・視力障害が徐々に進行。現状では、薬剤や手術治療によって、眼圧を下げることが唯一の治療法だが、眼圧を十分に下げるのが難しい例や、眼圧を十分に下げても依然として視野障害が進行する場合が少なくない。
研究成果
研究グループは、開発済みの、VCP蛋白質のATPase活性を抑制する低分子化合物、KUS(Kyoto University Substance)剤を、緑内障で観察される網膜神経節細胞障害を起こしたマウスに、KUS剤を投与した結果、網膜神経節細胞の減少が抑制されることがわかった。
また、内在性のグルタミン酸によって緑内障を発症するGLAST遺伝子のノックアウトマウスにおいて、KUS121を10か月間投与したマウスでは、網膜の神経節細胞の数や網膜の神経線維数の減少が抑制されていた。
さらに、NMDAを注射し網膜神経節細胞障害を起こしたマウスにKUS剤を経口投与し、眼底の蛍光撮影を行ったところ、KUS剤投与マウスでは、神経節細胞減少が抑制されていた。
今回の研究によって、緑内障に対する神経保護という新たな観点からの治療薬開発や、網膜神経の細胞死によって引き起こされる他の眼疾患や神経変性疾患への応用も期待できる。緑内障に対する臨床試験の準備はすで進められており、患者への投与が早期に可能となることが期待される。
(画像は「京都大学 研究成果」より)

京都大学 研究成果
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/