体内での拡がりに関わる宿主蛋白質
国立研究開発法人日本医療研究開発機構は、2月8日、横浜市立大学らの研究グループが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の体内での拡がりに関わる宿主蛋白質を発見したと発表した。
この研究は、浜市立大学学術院医学群 微生物学の梁明秀https://newssystem.fujisoba.com/detail.php?pid=a教授と宮川敬助教らの研究グループが、国立感染症研究所・シンガポール国立大学・北里大学・米国ミシガン大学などとの共同で行ったもの。
薬効を弱める「cell-to-cell感染」
HIVが体内で多量に増殖するメカニズムとしては、感染細胞から放出されたウイルス粒子が別の細胞に感染する「cell-free感染」と、感染細胞と非感染細胞が直接接触することによりウイルスを受け渡す「cell-to-cell感染」が知られている。
このうち「cell-to-cell感染」では、細胞同士が密に存在するリンパ節などの組織でみられ、100個から1000個のウイルスが一度に伝播する。そのため、抗ウイルス薬を投与しても相対的な薬剤濃度が低下し、薬の効果を弱める一因となっていた。
新しいタイプの治療薬開発へ展開
同研究グループは今回の研究で、ウイルス構成因子を細胞の特定の場所に集積させることで「cell-to-cell感染」を制御する宿主因子として、癌抑制遺伝子産物であるAPCを挙げる。APCの本来の機能である癌抑制を阻害することなく、HIVの骨格蛋白質であるGagとの相互作用を阻止できれば、「cell-to-cell感染」を阻止できる可能性があるとしている。
また同グループは、APCとGagの相互作用を抑制する化合物などを探索し、新しいタイプの治療薬開発へ展開させたいともしている。
(画像はプレスリリースより)

エイズウイルスの体内での拡がりに関わる宿主蛋白質を発見 新たな治療法の開発へ期待 - 国立研究開発法人日本医療研究開発機構
http://www.amed.go.jp/news/other/20170208.html