副腎皮質ホルモンの概日リズムに着目
九州大学は10月17日、神経障害性疼痛が時刻により変動する仕組みを明らかにしたと発表しました。
これは同大大学院薬学研究院の大戸茂弘教授、小柳悟教授らの研究グループが、副腎皮質から分泌されるホルモンの概日リズムに着目した研究によるもので、痛みを特定の時間帯に悪化させる分子を標的とした治療薬の開発や、神経障害性疼痛の新しい治療法の構築に繋がることが期待できるという。
神経性障害性疼痛は、神経のダメージによって発症する慢性的な痛みで、軽い触刺激でも激痛を引き起こす「痛覚過敏」が特徴。発症には脊髄のミクログリアという細胞で増えるプリン受容体が重要な役割を担っており、このプリン受容体はアデノシン三リン酸(ATP)で刺激されることで強い痛みを引き起こす。
神経障害性疼痛による痛覚過敏は、時刻によって痛みの程度が変動することが知られていたが、その仕組みは解明されていなかった。
アデノシン三リン酸(ATP)放出の概日リズムにより、神経障害性疼痛の時刻が変動
地球の自転に伴う外部環境の周期的な変化に対応するために、多くの生物は自律的にリズムを発振する機能(体内時計)を保持しており、この体内時計の働きによって、睡眠と覚醒のサイクルやホルモン分泌などに概日リズムが生じる。
大戸茂弘教授らの研究グループは、マウスを用いた実験で、副腎皮質からのホルモンの分泌が上昇する時間帯に脊髄の細胞であるアストロサイトから放出されるATPが増えることを見出した。
放出されたATPはミクログリアのプリン受容体を刺激して痛みを悪化させていたこともわかり、副腎皮質ホルモンによって生じるATP放出の概日リズムが、神経障害性疼痛の時刻の違いを引き起こしていることを突き止めた。
同研究グループは、今回研究対象とした「神経障害性疼痛」以外にも、様々な疾患の症状に概日リズムが認められていることから、体内時計の視点から病気のリズムの仕組みを解明し、新しい治療薬の開発や疾患の予防に役立てていきたい考えを示している。
(画像はプレスリリースより)

九州大学 ニュースリリース
http://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/52