人為的な免疫制御法の開発に役立つ発見
理化学研究所と東京工業大学は、4月5日、炎症反応を制御する新たな分子「MKRN2」を発見したと発表した。
この発見を行ったのは、理研統合生命医科学研究センター炎症制御研究チーム・田中貴志チームリーダーらの共同研究チーム。自己免疫疾患などの治療を目的とした人為的免疫制御法の開発に役立つことが期待できる発見だという。
ヒトの体は巧妙な調節を行っている
ウイルスや細菌に感染した際、ヒトの体は炎症反応を起こすことで侵入した病原体と戦う。しかし、この炎症反応が何らかの原因で暴走した場合、アレルギー性疾患や自己免疫疾患を発症することになる。炎症反応が過剰にならないよう、ヒトの体は巧妙な調節を行っていると、同研究チームは考えた。
同研究チームは今回、酵母ツーハイブリッド法という手法を用いて、核内タンパク質「PDLIM2」と結合するタンパク質を網羅的に探索。炎症反応を抑制するタンパク質分子の同定を試みた。その結果、「MKRN2」というタンパク質が炎症反応を収束させる新たな分子であることを発見している。
「MKRN2」と「PDLIM2」は協調して炎症反応を抑制
「MKRN2」は、「PDLIM2」と結合することで、炎症反応に必須の核内転写因子「NF-κB」の働きをより効率的に抑制することが、今回の研究で明らかになった。「MKRN2」を欠損させた免疫細胞では、「NF-κB」の分解が妨げられ、コントロールの細胞と比べて炎症反応が2~3倍増加することも判明したという。
同研究チームは、「MKRN2」と「PDLIM2」は互いに協調し合って炎症反応を抑制しているとする。なおこの研究成果は、英国のオンライン科学雑誌『Scientific Reports』にも4月5日付けで掲載された。
(画像はプレスリリースより)

炎症反応を制御する新たな分子MKRN2を発見 - 理化学研究所
http://www.riken.jp/pr/press/2017/20170405_1/