病原性細菌にのみ働く薬剤の開発へ
京都大学は、4月5日、コレラ菌などが生存において必須とする酵素(NQR)に対し、阻害剤が結合している部位を、初めて特定したと発表した。
この研究は、同学農学研究科・三芳秀人教授らの研究グループが、米国・レンセラー工科大学と共同で実施したもの。病原性細菌にのみ働く薬剤の開発へ貢献する発見だという。
有望な殺菌剤として期待されていた
NQR(ナトリウム輸送性NADH-キノン酸化還元酵素)は、細菌の細胞膜に存在する電子伝達酵素。1977年、コレラ菌において初めて発見された。その後、一部の海洋性細菌や病原性細菌でも発見され、現在では約100種類の細菌においてその存在が知られている。
NQRは、細胞膜を介してナトリウムの能動輸送を行う。形成されたナトリウムの濃度勾配は、エネルギー生産や鞭毛運動の駆動力として必須となる。そのため、NQRを阻害する化合物は、細菌のエネルギー代謝全般を遮断する有望な殺菌剤として期待されていた。
ドラッグデザインを進める基礎的知見を確立
同研究グループは今回の研究にあたり、結合部位を直接的に調べることができる有機化学的手法(光親和性標識法)を採用。阻害剤やキノンの結合部位を、初めて明らかにした。
同研究グループはこの研究成果が、薬剤開発(ドラッグデザイン)を進めるための基礎的知見を確立するものとしている。
(画像はプレスリリースより)

コレラ菌の生存に必須の酵素、阻害剤との結合部位を特定 -病原性細菌にのみ働く薬剤の開発へ貢献- - 京都大学
http://www.kyoto-u.ac.jp/