アスパラガスより発見
理化学研究所(理研)統合メタボロミクス研究グループの中林亮研究員、斉藤和季グループディレクター、楊志剛元特別研究員らの研究チームは、アスパラガスにおいて血圧上昇に関与するアンジオテンシン転換酵素(ACE)に対して阻害活性を示す含硫黄代謝物を発見し、アスパラプチンと命名した。
ヒトに有益な活性(抗炎症作用、抗酸化作用、抗ガン作用など)を示す天然化合物の発見は、メタボロミクスにおいて重要な課題の1つである。
アスパラプチンの発見
様々な植物に含まれている硫黄代謝物をアスパラガスは比較的多く含むことが知られており、アスパラガス抽出物が血圧降下作用を示すことは今までも知られていた。また、医薬品などに使われる硫黄を含む化合物は、ヒトの血圧上昇などに関わるACEへの阻害活性を示すことが知られている。
研究チームはACE阻害活性を示す硫黄代謝物をアスパラガスからS-オミクスを用いて探索し、アルギニンとアスパラガス酸で構成されるアスパラプチンを発見した。
今後、アスパラプチンの血圧降下作用を詳細に評価することで、アスパラガスの健康機能性におけるアスパラプチンの寄与を明らかにし、健康機能性食品や医薬品などへの展開を期待できる。
「S-オミクス」の有用性
S-オミクス(サルファーオミクス、エスオミクス)とは含硫黄代謝物特異的分析手法である。質量分析における34Sを含む同位体イオンを指標とした含硫黄代謝物を、網羅的に分析することが可能だ。
本研究では47種類の植物凍結乾燥粉末における、含硫黄代謝物の網羅的なスクリーニングに用いた結果、アスパラガスからアスパラプチンが発見された。
さらに本研究により、S-オミクスが新規含硫黄代謝物の効率的発見に有用だと示された。S-オミクスを植物だけでなく、動物等にも適用することで様々な構造を有しヒトに有益な活性を示す、新たな含硫黄代謝物の探索が可能となる。

理化学研究所
http://www.riken.jp/pr/press/2015/20150526_3/