A-STEPを利用した研究成果によるもの
科学技術振興機構(以下、JST)は、Adipo Medical Technology株式会社の設立を発表した。同社は、心筋再生細胞製剤を製造するベンチャー企業。
医薬基盤・健康・栄養研究所の松山晃文氏らが研究開発を行ってきた「同種脂肪組織由来多系統前駆細胞の重症心不全治療細胞医薬品としての開発」の研究成果に基づき、企業治験を行い3年後には製造販売承認申請を目指すとしている。この研究は大学・公的研究機関などで生まれた研究成果をもとに、実用化を目指すための幅広い研究開発フェーズを対象とした技術移転支援制度(A-STEP)を利用したもの。
なお、日本医療研究開発機構(AMED)が、この課題を承継し、引き続き製品化に向けた支援を行うという。同機構は、2015年4月1日に米国の国立衛生研究所(NIH)を参考に、日本の医療研究の司令塔を担う「日本版NIH」として日本医療研究開発機構が設立されている。
脂肪組織由来多系統前駆細胞
何度も心筋梗塞を発症した重篤な慢性心不全では、心筋細胞のもととなる心筋幹細胞が減少・消失しているため、現在の治療法では、限定的な効果しか期待できず、新規治療法の開発が望まれていた。
しかしながら、松山晃文氏らは、脂肪組織由来多系統前駆細胞を原料とし、心臓カテーテルで投与後に心臓の筋肉の中で心筋細胞へと変化して心臓にとどまる細胞を、再生医療等製品として医薬品と同等で、かつ患者に投与できる水準で製造することに成功。
脂肪組織由来多系統前駆細胞は、脂肪組織から得られる、様々な細胞に変化する能力が高い細胞で、心筋細胞のほかに、神経系の細胞、肝臓の細胞などへも分化することが確認されている。この治療法は心筋梗塞を起こした部分にだけ細胞製剤を投与できるため、副作用や患者への身体的負担が少ないだけではなく、繰り返して治療を受けることが可能となる。
また、Ready-made型の再生医療等製品としての開発が成功したことから、患者の状態に合わせて治療計画を立てることが容易となる。
(画像はニュースリリースより)

科学技術振興機構 ニュースリリース
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20150410-2/index.html