非環式レチノイド
理化学研究所と東京医科歯科大学の共同研究グループは、2016年1月8日、世界初となる肝がんの再発予防薬、非環式レチノイド(一般名、ペレチノイン)の作用メカニズムを解明したと発表した。
外科的切除などの治療後でも再発する可能性の高い肝がんに対し、非環式レチノイドは肝がん細胞の選択的な細胞死を引き起こし、再発リスクを20%以下に引き下げることから、再発予防薬として期待されている。現在、第III相臨床試験まで治験が進められている。
核局在を引き起こす
非環式レチノイドには、タンパク質架橋酵素のトランスグルタミナーゼ(TG2)を細胞核に局在化させ、細胞核の転写因子Sp1の架橋を促す作用がある。
これにより増殖因子受容体遺伝子が発現しにくくし、肝がん細胞を死滅させる。この作用は2011年に発見されたが、TG2の核局在を誘導するメカニズムは不明だった。
今回、共同研究グループは、TG2のドメインの3番目に核内移行シグナル、4番目に核外移行シグナルが存在すること、加えて、非環式レチノイドがTG2と核内移行のタンパク質、インポーチンとの複合体形成を約2倍にしてTG2の核局在を招くことを突きとめた。
TG2の核局在は肝障害、神経変性疾患などを誘引するため、今後、これらの疾患に対する薬剤の開発にTG2が標的となり、TG2の核移行を促進する分子の探索が新たな抗がん剤につながると考えられる。
(画像はプレスリリースより)

理化学研究所・東京医科歯科大学 プレスリリース
http://www.riken.jp/pr/press/2016/20160108_3/