再髄鞘化に成功
2016年1月8日、慶應義塾大学医学部生理学教室(岡野栄之教授)と同整形外科学教室(中村雅也教授)は、ヒトiPS細胞から効率的にオリゴデンドロサイト前駆細胞へと分化誘導する方法を開発し、マウス損傷脊髄の再髄鞘化に成功したことを発表した。
背景
脊髄を損傷すると、損傷部以下の知覚・運動・自律神経系が麻痺するが、損傷した脊髄そのものを再生する治療法は確立されていない。
脊髄損傷に対する、神経幹細胞移植による機能回復メカニズムの一つとして、移植細胞がオリゴデンドロサイトに分化し、神経の再髄鞘化が重要であると知られているが、ヒトiPS細胞由来神経幹細胞は主にニューロンに分化し、髄鞘の形成を担うオリゴデンドロサイトへの分化が進みにくいという課題があった。
研究成果
研究グループは、オリゴデンドロサイト前駆細胞を多く含む神経幹細胞へと分化誘導する方法を用いて、脊髄損傷マウスに神経幹細胞を移植し、その有効性を検証した。その結果、移植した細胞は、損傷脊髄内で生着、神経系3系統の細胞に分化し、運動機能の改善や電気生理学的改善も見いだされた。
脊髄損傷に対するヒトiPS細胞由来神経幹細胞移植の臨床応用が、実現されつつある。今までの細胞移植でも有意な運動機能の回復が認められていたが、この成果によって、より機能回復を望める可能性が示唆された。
(画像はプレスリリースより)

慶應義塾大学 プレスリリース
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