予後不良で新規治療法に期待
九州大学の研究グループは、2015年12月22日、九州大学病院別府病院と茨城県つくば市の産業技術総合研究所と共同で、肝内胆管がんや混合型肝がんの原因遺伝子をMOB1シグナル経路であると特定し、抗寄生虫薬イベルメクチンが肝内胆管がんの治療薬になる可能性があると発表した。
2015年のがん統計予測で、肝がんは男性の部位別がん死亡数で第4位とされている。肝がんは原発性肝がんと転移性肝がんに分けられ、原発性肝がんでは肝細胞がん、肝内胆管がん、混合型肝がんの順に発症頻度が高い。
肝内胆管がんと混合型肝がんの合計で原発性肝がんの約15%と稀少ではあるが、これらの予後は非常に悪いため新規の治療法が求められている。
現在、肝細胞がんの発症・進展にMOB1シグナル経路が重要であるとわかり、MOB1の下流で作動する転写共役因子、YAP1を標的とした薬剤の開発が世界中で行われている。
治療法を開発
研究グループは、MOB1が特に肝内胆管がんや混合型肝がんを発症し、シグナルの下流でYAP1や分泌蛋白質のTGFベータの増加が重要であることを突きとめた。
さらに、天然物ライブラリーからYAP1を標的とする抗がん剤を探索した結果、抗寄生虫薬イベルメクチンやミルベマイシンが肝内胆管がんの治療に効果があることを実証した。
イベルメクチンは抗がん作用を示すには寄生虫治療薬の濃度より高くなるため、今後、類似薬剤の選択を含め、安全性の検証が求められる。
研究グループは、YAP1を標的とする薬剤になりうる新規天然物や新規低分子化合物を明らかにする研究も進めており、肝内胆管がんや混合型肝がんの治療薬として単離することを目指している。
(画像はプレスリリースより)

九州大学 プレスリリース
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