効果的な治療法の選択へ
公益財団法人がん研究会(以下、がん研究会)・片山量平主任研究員、がん研究会がん化学療法センター・藤田直也所長、がん研究会有明病院・西尾誠人部長と、マサチューセッツ総合病院がんセンターの研究グループは、ALK陽性肺がんに対する次世代ALK阻害薬Ceritinibに対する耐性原因を発見した。
背景
ALK融合遺伝子を持つ肺がん(ALK陽性肺がん)は非小細胞肺がんの患者の約3~5%、発見されるといわれている。ALK融合遺伝子からできたALK融合タンパク質では、恒常的なALKチロシンキナーゼの活性化により細胞増殖シグナルが出続け、がん細胞が増殖する。
このALK陽性肺がんに対しては、異常活性化したALKのチロシンキナーゼ活性を阻害できる、ALKチロシンキナーゼ阻害薬が既に臨床応用されている。多くの症例で数年以内に薬剤耐性を持ったがん細胞が出現し、再発することが問題となっていた。
研究成果
研究グループはALK陽性肺がんに対する次世代ALK阻害薬Ceritinib(国内承認申請中、米・欧承認済)への耐性機構として、新たに薬剤排出トランスポーターの1つであるP糖たんぱく質(ABCB1)の過剰発現がCeritinibのがん細胞外への排出を促進し、Ceritinib耐性を起こすことを発見した。
また、その耐性に対してP糖たんぱく質の阻害剤とCeritinibの併用療法や、P糖たんぱく質による排出の関与を受けないALK阻害薬(アレクチニブやLorlatinib)が有効であることを示す結果を得た。
現在国内では、2種類のALK阻害薬が承認され臨床応用されている。今後様々なALK阻害薬が使用可能となった場合、ALK阻害薬耐性となったときに、ALK遺伝子の変異に加えて、P糖たんぱく質の発現を免疫染色法等にて検索することで、様々なより効果的な治療法の選択に役立つことが予想される。
(画像はプレスリリースより)

国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 プレスリリース
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