心筋梗塞や脳梗塞の発症予防の可能性
順天堂大学大学院医学研究科・代謝内分泌内科学の三田智也准教授、綿田裕孝教授らの研究グループは、2型糖尿病患者の動脈硬化が、経口糖尿病治療薬で抑制されることを発見した。
背景
糖尿病患者は心筋梗塞や脳梗塞などの心血管系の病気である心血管イベントによる死亡が多いため、その発症を回避することは重要な課題である。
経口糖尿病治療薬であるDPP-4阻害薬は、インクレチン濃度を上昇させ、膵β細胞からインスリン分泌を促進させる、または、膵α細胞からのグルカゴン分泌を抑制し、血糖値を低下させる新しいタイプの薬剤(インクレチン関連薬)である。
一方で、インクレチンホルモンは、血管を動脈硬化から保護する作用があることが、報告されている。そのため、実際の2型糖尿病患者においてDPP-4阻害薬が血糖値の低下だけでなく、動脈硬化の進展についてどのような効果をもたらすのかわかっていなかった。
研究成果
研究グループは、2型糖尿病患者を対象に、DPP-4阻害薬(アログリプチン安息香酸塩)を投与しない通常治療群を対照とし、動脈硬化の指標として、頸動脈内膜中膜複合体肥厚度(IMT)を用いて比較試験を行った。
341名の心血管イベント既往のない2型糖尿病患者の協力により、試験を行った結果、通常治療群と比較して、アログリプチン投与群では、頸動脈のIMTの進展を有意に抑制していることを発見した。つまり、DPP-4阻害薬を投与すると動脈硬化が抑制されることがわかった。
今後の課題として、動脈硬化の進展を抑制する作用をもつDPP-4阻害薬が、実際に心血管イベントの発症を減らしたかどうかの検証が必要である。将来的には、動脈硬化が進行する前段階からのDPP-4阻害薬投与で、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管イベント発症リスクの低下が期待できる。
(画像はプレスリリースより)

順天堂大学 プレスリリース
http://www.juntendo.ac.jp/graduate/pdf/news21.pdf