日本初 自治医科大学
自治医科大学小児科学・山形崇倫教授らは、難治性小児神経疾病である芳香族Lアミノ酸脱炭酸酵素(以下AADC)欠損症患者にアデノ随伴ウィルス(AAV)ベクターを用いた遺伝子治療を行った。治療後の副作用はなく、治療後2か月で全身が強直してしまうジストニア発作が消え、運動機能の改善がみられた。
AADC欠損症
AADC欠損症は、生まれつきAADC遺伝子の変異により、AADCが働かなくなる常染色体劣性遺伝性の疾患であり、現在、世界中で100例程度、日本では6例が診断されている希少疾病である。
典型例は生後1か月以内に発症し、眼球が上転する発作や全身を硬直させる発作がみられ、自発的な運動は少なく、首もすわらず、ほとんどの患者が生涯寝たきりの生活を送ることになる。
研究成果
今回、兄妹(15歳男子と12歳女子)で発症したAADC欠損症患者に対して治療を行った。治療前は手指をわずかに動かせる程度で、ほぼ毎日、眼球を上転させる発作からはじまる全身の強直発作が数時間みられる状態だった。
2名に対し、定位脳手術により両側線条体(被殻)にヒトAADC遺伝子を組み込んだAAV-hAADC−2ベクターを注入した。経過は良好で、特に副作用もみられていない。
PET検査で、治療前はAADCの働きを検出する信号がみられなかったのに対し、治療2か月後には2名とも高信号がみられ、治療の効果が示された。また、苦痛な全身のジストニア発作が2名ともなくなり、1名は寝たきりの状態から、現在では歩行練習を行えるほど改善している。
今回の研究により、AADC欠損症に対するAAVベクターを用いた遺伝子治療の有効性が示された。今回の研究成果は、AADC欠損症だけでなく、多くの難治性小児神経疾患の治療法開発に道を開くものとなる。
(画像はプレスリリースより)

日本医療研究開発機構 プレスリリース
<a href=" http://www.amed.go.jp/news/release_20151110.html" target="_blank">http://www.amed.go.jp/news/release_20151110.html </a>