写真フィルムで培った技術で
富士フイルム株式会社は、2015年11月10日、再発・難治性の急性骨髄性白血病(AML)の患者向け抗がん剤「FF-10101」の臨床試験を2016年に米国で実施すると発表した。
同社は抗がん剤の研究開発に化合物の合成力や設計力、解析技術など、写真フィルムの技術・ノウハウを生かしている。これまでの実績として、再発・難治性の骨髄異形性症候群を対象とする抗がん剤「FF-10501」の臨床第1相試験を行っている。
FLT3阻害薬の「FF-10101」
AMLは血液腫瘍の一種で、がん化した造血幹細胞(白血病細胞)が骨髄中で増殖して血球減少となると同時に、骨髄外の組織に入り込んだ白血病細胞に障害が起きる難治性疾患である。AML患者の約3割にタンパク質のFLT3の変異が見られ、これが白血病細胞の増殖を引き起こしている。
「FF-10101」はFLT3のアミノ酸と結びついてその働きを阻害するFLT3阻害薬である。マウスモデルの非臨床試験では、遺伝子内縦列重複(ITD)変異やチロシンキナーゼドメイン(TKD)変異を起こした白血病細胞を減少させる効果が実証されており、ヒトへの成果も期待されている。
米国で実施する臨床試験とは別に、平成26年度国立研究開発法人科学技術振興機構の「産学共同実用化開発事業(NexTEP)」に採択されたため、同社は名古屋大学との共同研究も行う。患者の細胞に対する「FF-10101」の有効性や安全性の解析・検証を進め、その成果を今後の臨床試験に反映させるという。

富士フイルム株式会社 プレスリリース
http://www.fujifilm.co.jp/